仙台高等裁判所秋田支部 昭和24年(を)45号 判決 1949年11月21日
被告人
安部惠夫
主文
原判決を破棄し本件を秋田地方裁判所に差し戻す。
理由
弁護人の控訴理由の第一点について。
原審第一、二回公判調書によれば檢察官の起訴状の朗読後裁判官が被告人に対し権利保護のための告知事項を告げた上被告人及び弁護人に対し被告事件について陳述することがあるかどうかを尋ねたのに対し弁護人は妨害した事実は認めるが被告人の行爲は正当防衛であるから本件公訴事実第一については無罪と信ずると述べ且つ同弁護人は被害者菅原由二郞の証人調に際し同証人に対し当時の状況について尋間した上証拠調終了後の弁論においても右公訴事実第一について傷害の結果は認めるが当時の状況等から正当防衛であり無罪であると主張していることが明白である、しかして右は正当防衛となる事実が主張されたものというべきであるから原審は原判決においてこれに対する判断をしなければならないのにかかわらず原判決を檢討するも何等これが判断の事跡を認めることができないしからば原判決は刑事訴訟法第三百三十五條第二項に違背しこの点の判断を遺脱した違法があり右は判決の内容における法令の適用の誤であり同法第三百八十條にいわゆる法令の適用に誤があつてその誤が控訴理由第二点について説明のように判決に影響を及ぼすことが明らかであるから弁護人の論旨は結局その理由あり。